初めて会った女性を乗せて、車のアクセルを踏み込む。
10数分後、ふと助手席を見ると・・・もう寝ている。
駐車場に車を止めても起きない。
「ミホちゃん着いたよ!」
というと、手と手を合わせて頬を乗せ、もっと寝たいポーズ。
かわいい。かわいすぎて起こせない。
ファミリーサポート研修を受けたのが、去年の夏。
平日の3日間、お母さんたちに交じって乳児の沐浴方法など教わり、支援会員になった。最近、急にサポート依頼が増えて、ミホちゃん(6歳)たち5人の子とつながった。保育所や習い事に送迎したり、公園で一緒に遊んだりしている。
ダウン症のミホちゃんは、心臓手術という大変な経験をした。お母さんはシフト勤務の看護師さんで、なかなか病院の持ち場から抜けられない。
初日から車内で爆睡したミホちゃん、どんどん奔放な性格が露わになる。最近は助手席で、アンパンマンの歌に合わせて踊る。託児所や一時支援施設では、スタッフのお姉さんたちの人気者だ。
小学生のボーイズ3人とも友だちになった。
去年東京から越してきたタカシ君は、外遊びが大好き。一緒に2時間も鬼ごっこした。私が鬼になり、近くで遊んでいた子にタカシ君の隠れ場所を聞き出したら、すごい剣幕で怒られた。諜報活動は反則らしい。
この春1年生になったユウト君は、正反対のシャイな性格。放課後は学童クラブと水泳教室と図書館に行き、お母さんが仕事から戻る6時半すぎに自宅へ送り届ける。新しい環境に不安そう。「ぼくがんばってるよ」と背中で語っている。
4年生のアキラ君は夜の体操教室へ。自宅に送るのは8時ごろになる。
そして新たに保育所へ送ることになった、ショウ君(2歳)。お母さんは3児の母で、産休と育休を終え何年ぶりかの職場復帰。朝は自宅からバスで駅に向かい、改札口でショウ君を私に預け、新幹線に飛び乗って東京に向かう。
彼女の会社は社内公用語が英語で、慣らし期間が終わると数億円もの売り上げノルマが待っている。別の大企業に勤めるダンナは、いつも帰宅が11時ごろ。仕事から戻れば、子どもの世話が待っている。
共働き世帯、ひとり親世帯の慌ただしい暮らしが、子どもを通じて見えてくる。お母さんたちは、仕事と育児で毎日が綱渡りだ。いくら手助けしても、国の子育て支援策やおとなの働き方が変わらなければ、忙しさは変わらない。
この子たちが親になるころ頃には、少しでもゆとりある社会にしなければ。
※子どもの名前は仮名です
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