人生の残り時間を意識し始めたのが、40歳のとき。
ちょうどその頃バンコクに赴任し、今月はヨルダンとイラン、来月はパプアニューギニアと南太平洋のキリバスへと、さすらいの特派員生活が始まった。移動の機内やホテルの部屋で、ふと「報道カメラマン後」を考えることがあった。
いま思えば、あの辞令が終わりの始まりだった。
エイッと会社勤めに踏ん切りをつけたのが50歳。妻によると私は、入ったばかりの新聞社を「10年でやめる!」と言っていたそうだ。結局、25年も居座った。面白い仕事ができたのは入社10年目以降だったので、早まらなくてよかった。
退職して試行錯誤を重ねること2年余、その後の進路が定まらない。
人生の残り時間は、あとどのくらいだろう。
グラットン、スコット著「ライフ・シフト~100年時代の人生戦略」によると、いま生まれてくる子の半分以上は、105歳以上生きるそうだ。
いま40歳の人も、50%以上の確率で95歳以上生きるという。
長寿の日本人は、もっと生きる。私の人生も、あと半世紀あるかも知れない。
余命あと3年なら、私はお金持ちだ。赤いオープンカーだって買える。でも半世紀も生きるとなると、行く末はとんでもなく貧乏だ。
この本によれば、100年生きる時代に65歳で引退することは不可能で、80代まで働く必要がある。今までのように「教育」「仕事」「引退」の3ステージでは一生が終わらず、複数のキャリアを渡り歩くことになるという。
80代まで働けば、勤労生活は60年に及ぶ。その間、延々とやりたくない仕事を続けるのは不可能だ。
リストラされることもあるだろう。勤めていた会社がなくなる可能性だってある。最初の仕事がお腹いっぱいになり、何か他のことがやりたくなる人もいる(私のことだ)。
長生きの結果として待ち受ける、キャリアの移行を伴うマルチステージの人生。そこで大切なのは「私にとって何が重要なのか?」「私が大切にするものは何か?」「私はどういう人間なのか?」と、自らに問い続ける姿勢だと著者はいう。
ちなみに私の年齢では、自分が何を望まないかはわかっているが、何を望むかは明確になっていない。実験すること、じっくり内省すること、そしてそれまでの役割に基づく行動パターンから自分を解き放つことが必要だ、と書かれている。
そして、お金と仕事に目が行きがちだが、家族や友人、スキルと知識、健康といった「見えない資産」に恵まれてこそよい人生だ、とも。
マルチステージの生き方を選んだものの、移行期間から抜け出せないでいる。5年後10年後の自分の姿は、想像もつかない。
ただ65歳まで会社にしがみついた場合より、ブログのネタだけは多くなりそう。
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