市街地が晴れていても、我が家は雲の中。
雲の中にも、手紙は届く。
夏を信州ですごす前に、転送手続きをしておいた。律儀な日本の郵便制度はありがたいが、残念ながら、届くのは請求書ばかりだ。
電気、ガス、水道代の請求が、毎月それぞれ2軒分。税金と社会保険料。賃貸マンションの更新料。火災保険の請求書。
そして海の向こうから、ヨコ文字の請求書まで舞い込んだ。
差出人は、泣く子も黙る「タイ王国警察」。
20の春、チェンライでマリ○ァナ吸ったのがばれたか? 違った。スピード違反の反則切符だ。時速90キロ制限の道を112キロで走ったのだと。
まったく身に覚えがないが、オービスで撮られた証拠写真がついている。今年、タイに滞在したときの日付だ。
そして、レンタカーを借りる時に使ったクレジットカードから、有無を言わさず1000バーツ(約3000円)がチャージされた。
タイの幹線国道は6車線あり、流れは日本の高速道並み。時速90キロで走ったなら、路線バスにも抜かれてしまう。
これは、警察とレンタカー会社がグルになった、外国人狙いの税金稼ぎに違いない。
そして今日、住民票を置く自治体から封書が届いた。
健康保険の納付書か、それとも年金? この前振り込んだばかりなのに。時がたつのは早い。
ところが、中身は書類だけで、お約束の振込用紙が見当たらない。書類は独善的なお役所ことばで、とてもわかりにくい。タイ警察の英語より難解だ。
わが読解力を駆使すると、お金を払うのではなく、お金がもらえる、と読める。
目を疑う。どうやら、低所得者への給付金らしい。
私が、低所得者。
初めて知った。
2年前まで、けっこうな額の税金を、給料天引きされた。会社を辞め、昨年は収入が激減。今年になって、所得税はもとより、住民税も免除された。
新聞で毎日見かける単語が、まさに自分だったとは。目からウロコ。図らずも、バラマキ政策の受益者となってしまった。
いくらもらえるかが、とても小さく書いてある。
ひとり3000円。何度ゼロを数えても、3万円ではない。
もし本当に支給されたら、そのままタイ王国の国庫に納めさせて頂こう。