友人のひとりが、最近は庭仕事にはまっている。地道に土と向き合って、昼食を忘れるほど夢中になれるそうだ。
ふと、我が身を振り返る。最近、寝食を忘れるほど夢中になれたことがあっただろうか。熱中できることに出会った友がうらやましい。
私は退職後、いろいろなボランティアに首を突っ込んでいる。どれも新聞社の中間管理職に比べ格段にやりがいがあるが、ランチも忘れるほどかと言われると、決して忘れない。
子どもの頃、プラモデルを作ったり、友だちと雑木林でセミを取ったり、戦争のノンフィクションを読んだりして、時が経つのも忘れた気がする。逆に社会人になってからは、食べることも忘れるほど何かに熱中した記憶がない。
高倉健は「大学を出たとき、何をやりたいかはわからなかったが、何をやりたくないかはわかっていた」そうだ。それでサラリーマンにはならず、結果的に俳優という職業に進むことになったという。
高倉健と比べるのはおこがましいが、私の場合、もう少し明確に「報道カメラマンになりたい」という意思があった。それでも、この仕事に食べることも忘れるほど熱中したかというと、そこまでは行かなかった。
否応なく食事を抜いたことはある。朝から晩まで事件現場に張り込んだ時のこと。いつ動きがあるかわからないので、その場を離れられない。某公共放送局の取材スタッフは、視聴者から集めた金で2段重ね幕の内弁当を食べている。私の会社からは、コンビニのパン1個さえ届かない。もう受信料は払わない、と逆恨みした。
スティーブ・ジョブズが理想の iphone づくりに励んでいる時や、投資家のウォーレン・バフェットが企業の財務諸表を読み込んでいる時は、たぶん寝食を忘れていると思う。生涯を通じて心から熱中することに、若いころに出会う。本当にラッキーな人生だ。
私も投資は大好きだが、寝食を忘れたことはない。ちなみに投資銀行で働く人によると、普通の仕事では、努力と成果はある程度比例するが、こと投資に関する限り、この法則が当てはまらないらしい。朝から晩までディーリングルームに張り付いているのに、全く利益を出せない人。その一方で、いつもはゴルフばかりして遊んでいるのに、ここぞという時に現れ、大きく賭けて大きく儲け、さっそうと消えていく人がいる、という。
私の投資は草食系で、ひたすらインデックス型投信の積み立て。最初に銀行口座から自動引き落としする仕組みを作ってしまうと、あとは本当にやることがない。オートパイロットで水平飛行しているようなもので、寝食を忘れるほどの対象は、他を探さないといけない。難儀なことだ。
アメリカで、20代男性が3日3晩、ぶっ続けでコンピュータ・ゲームをやり続け、心臓発作で亡くなった事件があった。最後まで好きなことに熱中して、幸せな人生でした、と言えるだろうか。
優秀なゲームソフト製作者の術中にはまると、命が危ない。気をつけなければ。
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