先日、移送ボランティアの初陣で、おばあさんを自宅から病院まで送迎してきた。
気安く引き受けたはいいが、実は引っ越してきたばかりのよそ者だ。市内の主な道さえわかっていない。前日、何度も地図で予行演習した。
当日、住所を頼りに自宅に伺い、所属するNPOが「24時間テレビ」から寄贈された、車いす仕様の福祉車にお乗せする。
初対面の、しかも持病のある高齢者だ。緊張して運転した。車にも年季が入っていて、ゆっくり、慎重に路上のマンホールを避けて走らないと、段差がもろに体に響く。細心の注意を払った。
無事、病院に着き、2時間ほど待つことになった。玄関先で偶然、同じNPOの先輩に会う。彼は現役時代タクシードライバーで、運転はお手のものだ。「タクシーと違って儲からないから、もう辞めようかな」と言う。ジョークなのか、本音か。彼から、図書館やショッピングセンター、駐車場のあるカフェなど、待ち時間のヒマのつぶし場所を教えてもらう。
帰りも何事もなく、自宅までお送りした。耳が遠いようで会話に苦労したが、優しい人だった。別れ際、とてもいい笑顔を見せてくれたので、ホッとした。
このNPO、入ったばかりの私に「それでは来週火曜に、誰それの送迎をお願いします。住所はどこそこです」と、いきなり車のキーを渡す。移送サービス講習の修了証はおろか、運転免許証さえ見ようともしない。自由放任というか、信用してもらったというべきか。とてもおおらかだ。私が無免許でアル中の薬物常習者だったら、いったいどうするつもりだろう。
手伝いに通っている認知症グループホームでも、女性2人をドライブにお連れする機会があった。この時は施設の車で、城跡や駅前商店街、市役所など30分ほどのコースを巡った。「ここはどこ?長いこと住んでるけど、こんなところ初めて」「主人は決まった道しか運転しなかったから。私には免許取らせてくれなかったのよ、危ないからって」「あっ、こんな所にスーパーがある!お財布持って来ればよかった」と、2人は後部座席で大はしゃぎしていた。
施設の話では、入居者にうっかりお金を持たせると、際限なくモノを買い、それを惜しげもなくプレゼントしてくれて困るという。それはいいことを聞いた。次回はぜひ、財布を持ってきて頂ければと思う。
若いころ活発に暮らしていた人にとって、家や施設にこもり切りの生活は、さぞストレスが溜まるだろう。ドライブが気晴らしになってよかった。
ところで、いま3か所でボランティアをしているが、どこも私の前歴を聞こうともしない。日本では、ボランティア=善人、という位置づけなのだろうか。人さまの命を任されている気がするのだが。
たとえその人物が薬物中毒でなくても、もし新聞記者崩れだと、一切合財をブログに書かれたりもする。危険だ。
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