2025年11月28日

「成功」の反対は「失敗」にあらず

 

湘南に住んでいた頃の隣人・Kさん夫妻に会いに、札幌へ。

Kさんの夫は大学の先生だ。勤務先はそのままで札幌に移住し、大学まで1000キロを毎週、飛行機で往復している。

その距離感覚、まるでオーストラリア人。スケールの大きな人だ。

K先生に大学院受験の結果を知らせると、

「法科大学院や、公認心理師、臨床心理士指定大学院は、国家試験の合格率が学校の評価に直結します。だから入試では、受験生を厳しく選別する」

「学部から上がってくる内部生を優遇する傾向は、どの学校もあり得ます」

「国立大は特に費用対効果にうるさい。だから老い先短い社会人より、若い学生を優先して入学させる傾向はあるかも…」

と、いうことだった。

 

1年半の受験生生活で得た教訓を、忘れないうちに書いておこうと思う。

①「意志力」でなく、「習慣」の力に頼るべし

→独学では意志力が続かないと思い、2年目から予備校に通った。「通信コース」もあったが、あえて「通学コース」を選択。名古屋まで170キロをJRで往復し、ビジネスホテルに泊まりながら講義を受けた。

おかげで生活にリズムが出来て、か弱い意志力に頼らずに済んだ。

②「公正世界信念」は、常に正しいとは限らない

→目に見えない「こころ」を扱う心理学は、絶対的な正解が存在しない。例えば心理学用語ひとつ取っても、本によって定義が違ったりする。だからどんなに勉強しても、あいまいな部分が残った。

入試では採点する教授の専門をしっかり把握しておかないと、無駄な努力ばかりで時間を浪費し、いつまで経っても合格にたどり着けない、ということが起こり得る。努力は常に報われる、とは限らないのだ。

③「運がいい人」とは「チャンスに遭遇する確率が高い行動をしている人」、つまり「試行錯誤の回数が多い人」

→答案用紙を論述で真っ黒に埋めても、なぜか結果は不合格だったし、圧迫面接で散々な目に遭っても、なぜか受かる時は受かる。

心理学は正解がないからこそ、意中の大学以外にも、複数の学校を受験することが大事だ。

④「自分が何に興味を持ち、喜びを感じるか」を探すなら、「特にがんばったつもりはないが、周囲からよく褒められること」を見つけるのが近道

→特にがんばったつもりはないが、予備校のテストはだいたい満点が取れた。そして受験が終わった今も、暇さえあれば心理学の本ばかり読んでいる。

好きこそものの上手なれ、だ。

⑤「成功」の対義語は、「失敗」ではなく「挑戦しないこと」

→もしK先生の言葉を2年前に聞いていたら、たぶん受験しなかった。

知らないが故の蛮勇が、結果オーライを導いた…‼

Sapporo Japan, November 2025


2025年11月21日

たかがごみ出し、されど…

 

会社時代の同僚クリコさん一家が、長かった海外暮らしから心機一転、すぐ近くに引っ越してきた。

「これ読んどいてね~ なんだか知らないけど」

クリコさんが、市役所でもらった冊子をダンナに手渡した。

「…何これ」

外国籍(でも日本語ペラペラ)のダンナさま、冊子を手に呆然としている。

「○○市 ごみ 出し方の手引き」と表紙に書かれたそれは…

なんと、43ページもあった。


そうなのだ。わが家は隣のM市だが、ごみ出しルールの細かいこと!

毎日、家庭で出るごみを、25品目に分別しなければならない。

例えば、プラスチックごみは「長辺30センチ以上」と「それ以下」に分別。

ビン類は、「透明」か「茶色」か「その他の色」に分別。

「キリン」「アサヒ」「サッポロ」のビール瓶は、収集日が別。

紙類を、まとめて「燃えるごみ」に出すのはご法度。

封筒やメモ用紙、はしの袋などの小さな紙は、分別して「資源ごみ」へ。

和紙や感熱紙、写真は、「燃えるごみ」へ。

ペットボトルは、よく水洗いして「資源ごみ」へ。

キャップとラベルは必ず外して、「プラスチックごみ」として出すべし、等々…

ごみの回収日は、曜日別、品目別に「週2回」「週1回」「月2回」「月1回」と決められている。カレンダーとにらめっこして、間違えないよう細心の注意を払いながら、朝8時30分までに出す。

そして、ごみ袋の表に、必ず名前を書く。

うっかり忘れると、回収してもらえない。

いやはや…


 ところが同じ県内でも、C市はとても大らか。

分別は、「可燃ごみ」と「不燃ごみ・資源ごみ」の2種類のみ。

金属やガラス以外はだいたい可燃ごみ、と覚えておけばOKだ。

プラスチックを燃やしてもダイオキシンが出ない高性能焼却炉があるのか、それとも「住民に高齢者が多いから、やむなくルールを簡略化した」のか。自宅近くの「ごみステーション」は24時間365日、いつでもごみ持ち込み可だ。

M市とC市を往復しながら双方で暮らしていると、ごみを捨てやすいというそれだけで、生活の幸福度は大幅にC市の方が高い。

たかがごみ出し、されどごみ出し…



2025年11月14日

「オータニ・エフェクト」

 

たまには、タイムリーな話題を。

今年も米大リーグのMVPに輝いた大谷翔平選手は、広告界でも唯一無二の存在だ。ロサンゼルスで広告代理店を経営する岩瀬昌美氏が、マーケターの視点から「オータニ・エフェクト」を取り上げている。

プレジデント・オンラインから、一部を紹介します。

・大谷選手の昨年の広告収入は、推定7000万ドル(約109億円)。ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手(700万ドル)の10倍だ

22年に達成した「規定打席と規定投球回を同時にクリア」「投手として10勝以上・打者として30本塁打以上」、24年の「50本塁打&50盗塁」はいずれもMLB史上初。その圧倒的な実績が、大谷選手のブランド価値の基盤にある

・だが、大谷選手が広告界で成功した大きな要因は、彼がアメリカで築き上げた「古き良きアメリカの野球少年」というパブリック・イメージにある

・球場にゴミが落ちていれば拾い、不調でもベンチで暴れない。いつも爽やかな笑顔で、勝っても負けても腐らない。こうした振る舞いがアッパー層の「ジェントルマンであれ」という価値観に合致し、「よくできた息子」として、アメリカのお母さん世代から絶大な支持を得ている

・さらに、アメリカが抱える人種問題の中で、大谷選手は「ダイバーシティ・イメージ」のポジティブな側面を持っている

・英語が堪能でない東洋人が、純粋な情熱とひたむきな努力によって成功を収める姿は、多様性を重んじるアメリカ社会において希望の象徴となり得る

・以前、大谷選手が通訳を使っていることを揶揄した野球解説者が、コメントの撤回と謝罪に追い込まれた。これは、移民への偏見を是正しようとするアメリカ社会の動きを反映している

・大谷選手のドジャース移籍後、球場広告の値段が爆上がりしたにもかかわらず、その5割が日系広告になった。エンゼルス時代、目立つバックネット裏に広告を出した「くら寿司」は、超お得な買い物をしたといえる

・ロサンゼルスで家族4人で野球観戦に行けば、チケットだけで約400ドル(5万7000円)。ホットドッグや飲み物、お土産代を含めれば14万円を超える

・「持てる者」と「持たざる者」の格差が広がる中で、それでも大谷選手を見にスタジアムに足を運ぶ人々は、彼に「夢」を見出しているのかも知れない

・水原一平元通訳による違法賭博問題の際、「なぜ多額の資金の動きに気づかなかったのか」「なぜ自分で英語で説明しないのか」という批判が噴出した。アメリカが自己責任の国であり、移民社会であるからこそ、成功者には「アメリカン・ドリームに挑戦した者」の責任と自覚が求められる

・大谷選手が少しずつ英語でメディア対応するようになったことは、アメリカ人から「本当の仲間」と見なされるきっかけになる

・大谷選手が輝き続ける限り、日本もまた世界でその存在感を持ち続けることができるだろう

Yarigatake, from NH707 NGO-SPK  2025/11/07


2025年11月6日

大学院受験の魑魅魍魎

 

改めてわが身を振り返れば、高校受験も大学受験も就職活動も、第2志望にご縁を頂いている。

そして、第2志望に行って本当によかった(=第1志望に落ちてよかった)と、心から思う。

いやいや、負け惜しみでなく本当に!

今回の大学院受験もまた、第2志望校に行くことと相成った。

セラヴィ、それが人生だ。気持ちも新たに、充実した2年間を送りたい。

 

「高校受験や大学受験と大学院受験は、まったく異なります。大学院受験は、誰も助けてくれない大人の受験です」

予備校でお世話になった、ミヤガワ先生の言葉を思い出す。

高校や大学受験の時は、予備校の模擬試験を受ければ、自分の実力が偏差値で示された。全受験生の中での自分の位置を、正確に知ることができた。

今回、心理系大学院に挑戦するに当たり、1年目は独学で勉強し、第1志望校だけを受験して惨敗。次の年は予備校に通った。

本番1か月前に行われた実力診断テストでは、自慢じゃないけど(自慢だけど)全国7位。上位5%に食い込む点数が取れた。

我ながら頭脳明晰! 心理学部の学生なんかに負けねーぞ!

好きこそものの上手なれ、だ。

そして迎えた、試験本番。

出題された設問には、明らかに予備校の模試レベルを上回る、かなり難解なものが含まれていた。

そして、

「心理系大学院入試に正解はない。教授がいいねと思った論述がマルになる」

というウワサが、疑心暗鬼をかき立てる。

さらに、合計300点満点のうち、専門科目と英語が200点で、たった15分間の面接に100点が配分されるという現実。

(第2志望校は、400点満点のうち面接が200点を占めた)

筆記試験でがんばっても、面接次第でいくらでも不合格があり得る。だから面接は、極度の緊張を伴った。

「就職面接は自己呈示でいいけど、大学院受験は自己開示の方がいい」

というミヤガワ先生のアドバイスに従い、面接では「自分をこう見せたい」と意図的に印象操作を行う(自己呈示)より、自己の内面を正直に、率直に伝える(自己開示)ことを心掛けた。

1勝1敗だった今回の結果を考えると、結局、その大学のカラーに合う人材かどうかが合否を分けたのかも知れない。

「大学院受験は大人の受験」という先生の言葉が、身に染みた。

Tateshina Japan, 2025


「成功」の反対は「失敗」にあらず

  湘南に住んでいた頃の隣人・ K さん夫妻に会いに、札幌へ。 K さんの夫は大学の先生だ。勤務先はそのままで札幌に移住し、大学まで 1000 キロを毎週、飛行機で往復している。 その距離感覚、まるでオーストラリア人。スケールの大きな人だ。 K 先生に大学院受験の結果...