2020年7月17日

「決断~会社辞めるか辞めないか」

「決断~会社辞めるか辞めないか」 成毛眞著 中公新書ラクレ

 日本の新聞発行部数は、1年間で約200万部(5%)減り、過去最大の落ち込みを記録した。20年間で、業界の規模が4分の3に縮小した。

 これが他の業界なら、新聞を筆頭にメディアがこぞって「倒産の危機」と報じたはず、と著者はいう。

そしてメディア業界の凋落は、「既存のビジネスモデルが行き詰った先行的な典型例」。これからは、自分が身を置く産業が衰退していく中で、誰もが決断を迫られる「大決断時代」が到来する、のだそうだ。

元マイクロソフト社長の著者が、50歳前後で新聞社や雑誌社を辞めた4人にインタビューしたのが、この本だ。

 4人はいずれも私と同世代で、学生時代はろくに授業にも出ずに、立花隆や本田勝一、田原総一朗らの本を読みふけっていたというから、まるで自分。

 中でも共感したのが、新聞記者からフリージャーナリスト、そしてネットメディアに移った大西康之氏。彼は元日経新聞記者だが、読んでいて「新聞社はどこも同じだなあ」と思うことしきりだった。例えば・・・

・夜回りの後、歌舞伎町に集まって酒を飲みながら情報交換。朝方黒塗りのハイヤーで帰宅すると、すでに朝駆け用の別のハイヤーが家の前で待っている。シャワーを浴びて着替え、「お待たせ」と乗り込む。もはやチンピラの生活

・後輩の記者が「今日はクラウンだからシートにマッサージ機能がついてないんだよな」と愚痴っていた。だからセンチュリーかプレジデント以外は乗りたくないだよ、とか

・ダメな記者は徹底的にダメになっていく。取材先から接待攻勢を受けるし、社長人事のスクープ記事でも書かせておけば記者もルンルンだから。30歳を超えたぐらいで、そんな状況に陥ってしまう

・東京本社の狭い論理だけで生きてきた人間が、ロンドン駐在でいろいろなものを見て、それなのに帰国したら前と変わらない日常があって、夜討ち朝駆けして同期と競争して・・・虚無感がすごかった

・新聞社はスポンサーをとても大事にする。お前らの食い扶持はどこから出ているのか、と。決して読者ではない

・自分のキャリアを振り返ると、45歳までは楽しかった。身の肥やしにもなった。でもその後に積んだスキルは全部不要だった

・お金より会社の名刺を失う不安が大きかったが、フリーになってみたら、むしろ今までアクセスできなかった人とつながることができた


 私が思うに、本のタイトルはちょっと大げさ。今の会社を辞めて次のキャリアに進むことは、「判断」であって「決断」ではない。

 成毛さん、新聞社を辞めて投資家になり、2地域居住をしている人もインタビューしませんか? 面白い話が聞けるかも知れません。







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