退職した翌日、銀行口座に退職金が振り込まれていた。
今まで生きてきた中で、一番お金持ちになった。
さっそく何か買おう。
・・・そして、アマゾンから無数の赤いポリ容器入りの原油が届いた。
もちろんそういう訳はなく、いま滞在しているタイ北部ナンプレー村のゲストハウスから、原油の国際指標に連動するETFをタブレット端末で買ったという話です。
株や債券、不動産といった運用商品は、最近世界中で値上がりしてしまったようで、割安感はない。
ところが原油だけは、米国で進むシェール革命や中東産油国の減産見送りなどで、今年に入って4割も値下がりし、大バーゲンセール中らしい。
ここナンプレー村があるタイ第2の都市チェンマイは、訪れるたびに交通渋滞がひどくなっている。発展途上国を中心に、石油需要は増え続けるとしか思えない。化石燃料の埋蔵量には限りがある。いつかは値上がりするはずだ。それも、とんでもなく。
経済学者リンダ・グラットンは「ワーク・シフト」で、将来は化石燃料の枯渇で航空運賃が高騰し、人々が今ほど飛行機で移動しなくなると予想している。今回バンコクからチェンマイまでの約600キロを、片道6000円ほどのエアアジアで来たが、これから簡単に来られなくなる時代が来るかも知れない。移動の自由を奪われるのはつらい。今のうちに原油(指数)を買って、将来の移動コストをヘッジしておこう。
ちょうど日経電子版にエアアジアCEOトニ・フェルナンデスのインタビューが出ていた。彼も原油価格の上昇を見込んで、来年の航空燃料代の購入にヘッジをかけたと言っている。自分に都合のいい情報ばかりを集めてしまうのは、私の悪い癖だ。でも、コストの50%を燃料代が占める航空会社のトップが、会社の存亡をかけて考えたことだ。当たるに違いない。勇んで買ってはみたものの、原油の値段はその後さらに下がり続けている。人生、そういうものだ。成功者とは、成功するまでやめない人のことだという。私も、原油が上がり始めるまで長生きしようと思う。
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