ヒマラヤ登山隊に参加することになり、病院にひと月の休暇をもらう。
勤務最終日、医師や看護師に出発のあいさつ。みんな笑顔で送り出してくれたが、看護師長の眼が笑ってない。
でも、1週間に患者さんが何人も亡くなるこの病棟で働いていると、
「死ぬときになって後悔したくない。やりたいことは、今やっておきたい」
という気持ちが、抑えられなくなるのだ。
マルヤマ師長、どうかお目こぼしを…
海外は1年ぶり。去年は、英会話を学ぼうとフィリピンに渡った。
コロナ禍が一段落した時期だったが、日本出国にはワクチン証明とPCR検査の陰性証明が必要。フィリピン入国では、感染で入院した場合の費用をカバーする保険と、予約済の復路航空券もいる。
到着したマニラ空港では、迷彩服の兵士がものものしく警戒する中、書類を審査するブースの長い行列に並んだ。
肝心の英会話学校は、すべて臨時休校中!そもそも、公立小中学校さえ休校していて、街から子どもの姿が消えている。
電車に乗れば、2両ごとに配置された警備員が車内を巡回し、「鼻マスク」姿の乗客を注意して回る。
結局、毎日ホテルの部屋に籠ってオンライン英会話を習った。
今回、成田空港のチェックインと出国審査は、平時と変わらないスムーズさ。バンコク経由で乗ったタイ航空とライオン・エアの客室乗務員は、マスクを着けている。目元を強調するメイクのせいか、女性CAの美しさがさらに際立つ。
乗客は、欧米人を中心にノーマスクが目立ったが、お咎めなし。警察官さえ呼びかねない一時期のピリピリした雰囲気は、まったくない。
到着したカトマンズ空港では、ワクチン証明を求められるも、けっこういい加減。友人が証明を出すのに手間取っていたら、係官に「いいから行け!」と言われたらしい。
市内は以前と変わらず、未舗装の砂利道をクルマと人と各種哺乳類が入り乱れて、それぞれの目的地に急ぐ。砂ぼこりと排ガスが充満していて、ふだんは忘れがちな私でさえ、率先してマスクを着用!
登山専門旅行社に行くと、所属の登山ガイドはほぼ全員、エベレスト方面に出かけていた。コロナが明けて、3年ぶりに登山者が殺到しているという。
ネパール全土に及んだロックダウンで、一時は3か月も自宅に軟禁されたという、旅行社のプラビン社長。
わが登山隊の経費、〇万ドルの札束を手渡すと、えびす顔を隠さなかった。
Lumpini Park, Bangkok |