2021年1月23日

Socialization が足りない

 

 コロナ禍の世の中で、よく耳にする英単語。

オンライン英会話でフィリピンの先生と話していると、Socialize とか、 Socialization という言葉が出てくる。

「あなたひとり暮らしなの? コロナ禍で友だちにも会えないでしょう、どうやってSocialize してるの?」

 という具合だ。

「毎朝、オンラインで先生と話すのが唯一の Socialization です

 と答えて、笑われた。

 フィリピンは家族や親族の絆が強いから、私のようなひとり暮らしは珍しいかも知れない。

 この前、初めて指名したシンディ先生は、眠たそうだった。いろいろ話題を振ってはみたものの、最後までノリの悪いレッスンになった。

 もうこの人に教わることはないだろうなぁ、と思った矢先、彼女から届いたレッスンレポートにびっくり!

Hello Miyasaka san!

It is a wonderful morning full of joyful thoughts. To have you in my class for the very first time is really an unexplainable pleasure, and it will always be. I just hope that you gasped something new that is very useful not just only in the class, but in your daily life.

Today's class was totally an amazing class and I did enjoy it, I hope you did too.

Well, great things happen when you start it from yourself, and it was great to know seeing how you thrive strenuously studying the English language. Anyhow, continue doing it and the possibilities to catch more knowledge would be always easy and fun.

 And never think that English is a very stressful language; think it in another way so it would go with the flow.

Nevertheless, you did great in class and I am very proud to say that. Thus, continue to inspire and be inspired. It will lead you to awesomeness. 

Furthermore, I would like to say thank you dearly for booking your class with me today. See you!


 ホントに、そんなふうに思ってくれてたの?

半信半疑で後日、もう一度シンディ先生のレッスンを予約した。

・・・やっぱり、けだるそうだった。笑

でも、その後届いたレッスンレポートは、再び表現力豊かな文章だった。

話すより、書く方が得意な人かも知れない。

または自分同様、コロナでSocialization が不足した人だったのかも。

こんな英文をスラスラ書けるようになれたら、と思う。

Niigata Japan, January 2021


2021年1月15日

「やさしさ」への投資

 

 新型コロナウイルスの蔓延にも関わらず、2020年の株式市場は好調だった。

 去年1年間の資産クラス別リターンをドルベースで見ると、

先進国株+17% 新興国株+16% 日本株+5% 先進国債券+6% 新興国債券+5% 日本債券-1% 先進国REIT10% 日本REIT17% ハイイールド債券+7% 原油-21% 金+24

 新興国を含む外国株式に集中投資するミヤサカ・ファンドも、市場平均並みのリターンを確保したもよう。

 と、ここまで書いて、株式投資に対するモチベーションが激減している自分に気づいた。

「もうどうでもいいや~」

そんな気分。

 2人で80年は生きるつもりで、ほぼ全財産を株式市場のリスクにさらしてきた。それなのに、お金を使う人がひとり減ってしまった。

 治る見込みのない病気の治療費、という悲しい支出がなくなった代わりに、「夫婦でビジネスクラスに乗ってバリ島へ」みたいな目標もなくなった。

 リスクが高いとされる株式投資が、実はリスクに強いことは経験でわかっている。コロナ禍で急落した市場は、すぐに上昇基調を取り戻した。ワクチンの普及そして集団免疫が達成されれば、やがて巡航速度となるだろう。

個人投資家として自分ひとり食べていくぐらい、わけない。

…やる気が出ない。

 

作家のジョージ・ソーンダーズが、米シラキュース大学で行った8分間のスピーチ。世界中で話題になり、「人生で大切なたったひとつのこと」(海竜社)という邦訳も出ている。

ソーンダーズは小学生の頃、いじめられ、無視されていた転校生にやさしくできなかったことを、今だに後悔している、と話す。

そして「成功とは登っていくにつれ、目の前で高くなり続ける山のようなもの」で、成功だけを追い求めてもきりがない、だから

It’s a little facile, maybe, and certainly hard to implement, but I’d say, as a goal in life, you could do worse than: Try to be kinder.

(簡単そうに見えて、実践するのは本当に難しいのですが、「もっとやさしい人になること」を、人生の目標のひとつにしてみてはどうでしょう)

 Because, actually, nothing else does.

(なぜなら、実際、それ以外のことは意味がないからです)

 去年は悲しい出来事があった一方で、医療関係の方々や友人知人の、たくさんのやさしさに触れた年でもあった。

 いま、「やさしさ」のような intangibles(無形の資産)に、とても魅力を感じている。




2021年1月9日

オリーブオイルが凍る家

 

「冬の蓼科はとってもきれいですよ」

 友人のささやきに乗せられて、いつもは10月中に小屋仕舞いする八ヶ岳の家で、正月明けまで過ごしてみた。

 年末、1週間ほど留守にしてから戻ってみると、キッチンや洗面所、バスルームの蛇口から水が出ない。水洗トイレも流れない。

管理事務所に電話すると、すぐスタッフが来てくれた。家の北側にある水道管が凍っているという。

お湯をかけて、あっさり解決。 DIY能力ほぼゼロの人間にとって、管理別荘地で暮らすことは、生存の必須条件だ。

FF式石油ファンヒーターのスイッチを入れ、室内温度を20度に設定する。ヒーターが唸りを上げて作動し、灯油をガブガブ呑み込んでいく。

日が暮れると、葉が落ちたカラマツ林に降り積もる雪を、満月が青白く照らし出す。戸外は「無音」という音が聞こえてきそうな、圧倒的な静けさ。

夕ご飯を作ろうと戸棚を開けたら、オリーブオイル、米油、ごま油、すべてがドロドロに凝固していた。留守中、キッチンまで氷点下だったのか。

夜半、今度はバスルームの水が止まらなくなる。水栓の中が凍って膨張し、蛇口を破壊してしまったらしい。

またも管理事務所に助けを求める。

「この家は夏の別荘として建てられていますから、寒さには強くないんです」

 周囲の住人がとっくに引き揚げた無人の森に、しつこく居座る私を諭すように、管理スタッフのHさんがいう。

「留守中も、トイレとバスルームの床暖房は必ず点けて、室内が氷点下にならないようにして下さい」

 ハイ、申し訳ありません…

 

 大晦日の朝、玄関先の気温はマイナス15度。

 再び、蛇口から水が出なくなる。今度は設備会社の人を町から呼んで、水道管に巻かれた電熱線を補強してもらった。

 標高1600メートルの寒さ、恐るべし。

 

年明け、松本のマンションに戻って、エレベーター内に貼り紙を見つけた。

「冬の間、留守にする人は、必ず水抜き作業をして下さい。手順はYouTubeに公開してあります」

 集合住宅でさえ、松本でさえ、冬場は水道管が凍ってしまうようだ。

 

数日後、床暖房を入れっ放しにした森の家の電気代に、真っ青になる。

設備会社から送られてきた水道管修理の請求書にも…真っ青。



2021年1月2日

アドラー心理学

人生の選択を、他人のせいにしてはいけない。あなたは自分の人生を、自分の責任だけで選択しなくてはいけない____

東京で通っていたカウンセリングの先生にも勧められた、アドラー心理学。実生活にそのまま生かすのは大変だが、その考え方を知るだけで、物事をより俯瞰的に見ることができるようになった気がする。

(以下は哲学者でアドラー心理学研究の第一人者の岸見一郎と、ユーグレナ・出雲充社長が日経ビジネス電子版で対談した、その個人的備忘録です)

 

「課題の分離」

・子どもが勉強しないのは子どもの課題。親が口出しすべきではない

・勉強しなくて成績が悪ければ、行きたい大学があっても入れない。その結末は、子どもが自分で引き受けるしかない

・だから、子どもが勉強しないと相談に来た親には「それは子どもの課題であって、親のあなたの課題ではない」と言っている。子どもの課題に親が口を出すと、必ずトラブルになる

・これまで親に「勉強しなさい」と言われて勉強してきた子どもは、親が突然、何も言わなくなったら、勉強しなくなる。それで成績が下がり、いよいよこれではダメだと思い至って、子どもが自分の意思で勉強を始めたのなら、それが自立するということ。そうなるまで、親は手出し、口出ししてはいけない

・親に「子どもの課題については、一切口出ししないで」と言うと、親は「でも」と言う。もし何か言うとすれば、誰の課題であるかをきちんと分けた上で「事態はあなたが思っているほど、楽観できる状況だとは思わないけれど、またいつでも相談に乗るので、必要なときは言ってくださいね」という

・一生懸命に勉強して、いい学校、いい会社に入っても、幸せになれるとは限らない。だから、子どもが自分の意思で、親の理想とは違う人生を歩むことになっても、それを見守ろうという勇気を持ってほしい

 

「見せかけの因果律」~引きこもるために絶望する人たち

・「両親から虐待を受けたから、部屋に引きこもり、出られなくなった」といったロジックはまやかし。人の『現在』が『過去』の出来事によって規定されるなら、両親から虐待を受けて育った人は、すべてが引きこもりになっていないとつじつまが合わない

・「不安だから、外に出られない」のではない。順番は逆で「外に出たくないから、不安という感情をつくり出している」

・東日本大震災の後、被災地のパチンコ店に入り浸った人たちは、被災したから意欲を失い、前に進めずにいるのではない。前に進みたくないから、被災して意欲を失ったという「因果律」をつくり出している。それはあたかも、引きこもるために絶望を生み出すようなもの(厳しい言い方になるが…)




  

2020年12月25日

ようこそコロナフリー・ワールドへ

 

 画面の中で笑う女性の頭上に、いくつもの扇風機がぶら下がっている。

「あ、これ? 今ね、休校中の幼稚園で暮らしてるんだ」

「帰省先から戻って、隔離措置のまっ最中ってわけ。市政府にあてがわれたのがこの教室で、朝から晩までここで一人きり」

 その人は、オンライン英会話のフィリピン人講師、エンジェル先生。

PCR検査で陰性証明を取れば隔離は免除されるんだけどね、検査に5000ペソ(約1万円)かかるから。お金を節約しなくちゃね」

「けっこう快適だよ、ご飯はタダで配ってくれるし。でも退屈。オンラインで英会話教えて、あとはネットフリックス見てゴロゴロしてる」

「今日が隔離の最終日で、帰宅したらすぐクリスマス休暇だよ。楽しみ~」

 日本同様、毎日20003000人のコロナ感染者が出ているフィリピンでは、いまだ厳しい移動制限が敷かれている。

「日本では政府が『Go To トラベル』『Go To イート』というキャンペーンをやって、補助金出して外出を奨励してますよ」

そう私が話すと、エンジェル先生苦笑い。

「私たちフィリピノは、確かに不自由な思いをしている。でもこの状況では、移動制限が妥当だと思う」

 コロナに対する姿勢が対照的な、日本とフィリピン。

さて、正解はどちら?

 

エンジェル先生のレッスンを受けたのは、「蓼科東急ホテル」のツインルーム。家からクルマで20分の、小さな小さな旅をした。

日が暮れても、駐車場にはポツンと自分のクルマだけ。フロント・スタッフに聞くと、笑いながら

「今日も明日も、予約はお客様だけです。ごゆっくりお寛ぎ下さい」

ひとりリゾートホテルに泊まって、さぞ浮きまくるかと思ったら…

 まさかの丸2泊、全館貸し切り状態。一生に一度、あるかないかの贅沢な時間だった。

 本当に誰もいないので、ウイルスに感染する可能性もゼロ。束の間の、コロナフリー・ワールド。

 

 隔離生活中のエンジェル先生に、外の雪景色を見せた。

「わー、まるで映画みたい!」

 大ウケだった。



2020年12月19日

人生の諸問題②

 我ながら完璧な人生設計をしたつもりが、ここにきて、いささかの瑕疵が。

 松本の街って、けっこう寒い…

 朝の気温がマイナス5度だったり、一日中氷点下だったり。

 雪もよく降る。

 標高600メートルあるから、東京だったら高尾山のてっぺんで暮らしているようなものだろうか。

その上盆地気候で、冷え込みがキツイのかも知れない。

早朝ジョギングしていると、耳が千切れそうになる。

 

 ある時、出張で行ったシドニーの公園で、風を切って快調に走っていた(つもり)。

 すると、双子の赤ちゃんをタンデムのベビーカーに乗せた女性が後ろから近づいてきて、いとも簡単に抜き去っていった。

 それが深い心の傷になって以来、わざと散歩に毛が生えたぐらいのペースで走っていた。でもここでは本気で走らないと、寒さをしのげない。

 でも耳が痛い。

 路面が凍って、ツルツルになっていたりもする。

 すっかりこの地に定住する気でいたけれど…

来年の今ごろは、別の街で暮らしているかも。

 そのうち慣れるのかなぁ。

2020年12月12日

風景の力

 

 新聞社で一緒だった元同僚が、若くして会社を離れ、福島の田舎に住んでいる。

 長野から会いに行くと、新潟から福島へ抜ける峠が、雪に閉ざされていた。ぐるっと日本海側を回って、往復700キロのドライブになった。

阿賀野川に沿って谷間を進むと、突然視界が開けた。見渡す限り広がる田んぼの先に、雪の磐梯山がのんびりと横たわっている。古くからこの地に暮らす人々が、長い時間をかけて丁寧に形作った、まさに日本の原風景。

 

元同僚が移住したのは、ここ会津盆地の田んぼに点在する集落のひとつ。築100年の古民家を手に入れ、ほぼ自力で修復しながら暮らしている。

彼ら夫婦は、2人とも元写真記者。妻は修行を重ねてパン職人になり、歯ごたえのある重厚なパンを焼いて、縁側で売っている。最初は大変だったそうだが、いまや行列ができるパン屋さんだ。

夫はフリーの写真家として、震災で世界的ニュースになった「フクシマ」のその後を追い続け、国際的な写真賞を受賞した。

 夫妻にはヨーコさん()、カエデさん()という2人の子がいる。家ではほとんどテレビをつけず、パンを売るお母さんを手伝ったり、庭の大木の下で遊んだりして過ごしている。

 

たとえば、雪山で何日も嵐に閉じ込められ、飢えと寒さで死を覚悟した時。

垂直の岩に辛うじてしがみつき、このままでは力尽きて墜落するという時。

窮地に立った登山者の運命を左右するのは、生への執着がどれだけ強いかだ。そして、それまでにどれだけ人の愛情を受けたか、どれだけ美しい風景、絵画、音楽に触れたかが、生還への大きなカギを握っている。

ヨーコさんとカエデさんが将来、人生の大ピンチに直面した時。この雄大な風景の中で育てられた記憶は、間違いなく、彼女たちの命を救うことになると思った。

 

東京での安定したキャリアを捨てて、思い切ったことするなぁ。

ずっと不思議に思っていたが、まさに百聞は一見に如かず。

古い家が醸し出す独特の雰囲気を知り、冬の青空の下に広がる風景を眺めていたら、2人がここで暮らすと決めた訳が、あっさり腑に落ちた。

盆地気候で夏は暑かったり、冬が寒かったり。住んでいれば、いろいろ大変なこともありそうだ。

でも冬枯れの季節でこれだから、春から秋は、どれだけ綺麗なんだろう。

何度も訪れたくなる、とても魅力的な土地でした。

Copyright by Satoko Iwanami





HIKIKOMORI

  不登校や引きこもりの子に、心理専門職としてどう関わっていくか。 増え続ける不登校と、中高年への広がりが指摘されるひきこもり。 心理系大学院入試でも 、事例問題としてよく出題される。 対応の基本は、その子単独の問題として捉えるのではなく、家族システムの中に生じている悪循...